セナカを押して

「先輩、可愛すぎ」
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
財前の声が聞こえ、盗み聞きしてしまったのは昼休みのこと。
「どれくらい経ったんやっけ」
渡り廊下を通って移動をしていた時、校舎裏で友人たちと話をしている財前に気がついた。財前たちはユウジに気付かず、数人で盛り上がっている。どんな話をしているのかが気になり、ユウジはこっそり近づいてみた。
どうやら、友人の1人が彼女のことを相談しているらしい。財前がこのような話題に加わるのは、少し意外に思った。
「(あいつでもこういう話するんや…)」
「多分、来週で4か月くらい」
「もうそんなに経ったんか」
「もうヤった?」
「いや、それがずっと拒否られとってさー」
「うっわ、マジで!?信じられん!」
「俺やったら絶対次行くわ!なあ、財前」
「せやな。さすがに焦らされすぎたら引くっちゅーか、冷めるわ」
財前の言葉を、聞き流すことが出来なかった。友人達は財前の言葉に同調して頷いていたが、ユウジは思わず固まってしまう。
させてくれなかったら、冷める…?
「やんなー!やっぱ最長2か月やろ」
「どうせ別れるんやったら襲ってもたら?」
「アホかお前ー」
「財前は今までどんな感じやった?」
「よお考えたことないからわからへん。自然とすぐできとったし」
「お前モテるもんなー。やっぱ言うこと違うわー」
彼らの笑い声にはっとして、ユウジは慌てて渡り廊下を通り抜けた。逃げるようにその場を後にしたが、動揺は隠せない。教室のドアにぶつかってしまったり、机に躓いて転びそうになったりしながら自分の席に戻る。
そんな様子を不思議に思った小春は、落ち着きのないユウジに声を掛けた。
「ユウくん、今の転び方全然おいしないでぇ。本気でぶつかってどないすんの」
「え?あ、ああ…。せやな…笑いとしては0点やったな…」
「……?どないしたん、顔、赤いで?」
「っ…!こ、小春の顔が近いからやぁ」
「何やのそれ」
しっかりしぃやと言って小春は席に戻り、そのまま授業がスタートした。もちろん、ユウジが授業に集中できるわけがなく、頭の中は先ほど聞いてしまった財前の言葉でいっぱいだ。
『さすがに焦らされすぎたら引くっちゅーか、冷めるわ』
『よお考えたことないからわからへん。自然とすぐできとったし』
「(しかも最長2か月とか言うてなかったか…?俺らもうすぐ2か月なるんちゃうかったっけ―…?)」
『俺、先輩のこと好きなんですわ』
『うっわ、何やそれ。全然笑えへん』
『いや、冗談やなくて』
『え?』
『マジで言うてんですけど』
『……ライク?』
『やない方の』
『ひ、光…』
『付き合うてくれませんか』
偶然部室で二人になった時、突然告白された。何となく好意は感じていたが、本気だとは思っていなかったのでかなり驚いたのを覚えている。
言葉を詰まらせるユウジに財前は言葉を掛け続けた。あの財前がこんなにも必死になってくれているのだと思うと断ることも出来ず、不思議と嫌でもなかったので、頷いた。
『ええ、で…』
『…え?』
『付き合うたってもええって、言うとるんや』
『ほんまに?』
『こ、ここまで言われて悪い気はせんしなっ』
『……めっちゃ嬉しい』
「(あの時の光の顔は可愛かったな―………やなくて!せや、やっぱもう2か月経つで…!)」
付き合い始めてから約2か月。手を繋ぎ、抱き合ったり、キスをしたこともある。二人きりで過ごしていてそういった雰囲気になったことも何度かあった。しかし、まだ最後までは進んでいない。
一度押し倒された時に思いっきり頬を叩き、怒鳴った事がある。それ以来、彼は比較的大人しかった。そういえば最近はキスもしなくなったような気がする。一緒に過ごす時間は楽しく、あまり気にしていなかったが―…
「(これは、もしかして―…)」
冷めてしまったのだろうかと、不安になる。財前のことで自分が思い悩む日が来るとは、思いもしなかった。告白してきたのは向こうからだったのだから、無理もない。
顔が紅潮し、思わず両手で覆う。いつの間にかこんなにも夢中にさせられてしまっていた。
「(うわ、マジで恥ずかしい…。俺、もしかせんでも必死?あいつに捨てられとうないって?)」
ここで教師に当てられたが、答えられるわけがない。「それどころやないねん!」と叫ぶと教室が沸き、笑いでその場を誤魔化せた。普段からギャグを言っていて良かったと、ユウジは胸を撫で下ろす。
その後もぼんやりと過ごし、部活へ行くのに小春を置いて行きそうになった。慌てて教室に戻って謝ると、小春は不審そうに視線を投げかけるのだった。
「ちょっと、あんたら何かあったん?」
部活中、突然小春に話し掛けられ、財前は面倒くさそうに答えた。
「何もないですけど」
「そんなわけないわぁ。ユウくん、様子おかしいんやもん」
「あの人がおかしいんはいつものことでしょう」
「それは否定せんけど―…心当たりないのん?」
「やって、朝練の時普通やったし。…ああ、でも、さっき部室で何となく避けられた気はしますわ」
「ほら、やっぱり光くん関係よぉ!」
「んなこと言われても…」
「困るのよぉ!明後日ライブやから、今日中に何とかしてもらわんと!」
「はあ…」
頭を掻きながら、小春の話を聞く。昼休み後から様子がおかしいらしいが、理由は財前にもわからなかった。朝練以降、放課後部活が始まるまで会わなかったのだから。
しかし、ユウジに避けられているのは確かで、この状態が続くのは困る。ライブだって、密かな楽しみなのだ。
部活後。財前は部室の隅で着替えていたユウジの腕を掴み、一緒に帰ろうと言って強引に連れ出した。小春の甲高い声が聞こえたが、無視をしてユウジを引っ張って行く。
いつもなら「小春と挨拶くらいさせぇ!どつくど!」などと言って怒っているところなのだが、今日は何も言われなかった。大人しいユウジに、財前も少し戸惑う。
「(何なん、この人…。可愛えけど、何も言われんのも気持ち悪いな…)」
「な、何やその目は」
「いや、小春先輩良かったんかなって」
「いつも二人で帰っとるやんか」
「そうですけど…(で、何で視線逸らすねん。気まずいやろが)」
「……なあ、光」
「何スか」
「今日、俺ん家来ぉへん?」
「…は?」
「さ、最近遊びに来てへんやん!お前ん家行ってばっかやったしなっ。たまにはええやろ!」
「別にええですけど…(明日の練習オサムちゃんの『ツッコミ』やしな…)」
「そ、そっか!ほな行こか!うん」
そう言って前を歩き始めるユウジの背中を追いかけ、彼の家へ向かう。何度か遊びに来ているので、財前は躊躇いなく中に入った。まだ誰も帰っていないのか、明かりは点いていない。帰りが遅いのだと言うユウジに、財前は頷きながら靴を脱いだ。
部屋でゲームをしながら過ごす。ユウジは相変わらずモジモジとしながら財前との距離を保っていた。理由もなかなか聞きづらく、財前はゲームに夢中になっている振りをしてその場をやり過ごす。
しばらくするとユウジの両親と兄が帰宅し、夕飯時になった。結局話は出来なかったが、これ以上居座るわけにもいかない。そろそろ帰ろうと、財前が立ち上がったその時―…
「ま、待って!」
ユウジが財前の腕を掴み、引き止めた。突然のことに財前は目を丸くし、ユウジも自分で自分の行動に驚いている様子だった。じっと互いを見つめ合い、時間が流れる。耐え切れず財前が口を開くまで、ユウジは固まったままだった。
「…何スか」
「あ…う……えっと―…今日、泊まっていかへん…?もう、遅いし」
「明日平日ですよ?」
「せ、せやな…。やっぱ、無理やんな…」
「別に無理やないですけど…急に泊まって迷惑やないんスか?」
「え、ええねん!どうせおとんもおかんも作業で部屋篭っとるやろうし、光やったらうるさないから兄貴も気にせんやろし…!」
「(…………。)…親に電話して来ますわ。服とか貸してくださいよ」
「お、おう!任しとき!」
突然の誘いに疑問を抱きながら、財前は家族に「先輩の家に泊まる」と連絡した。テニス部の先輩と告げると、母親は謙也と勘違いしていたようだ。ダブルスの話をするのだとでも思ったのだろう。都合が良かったので、否定はしなかった。
電話をかけている間にユウジは台所に移動し、簡単な食事を作っていた。匂いにつられて財前が顔を覗かせると、ユウジは照れくさそうに「そこに座れ」と言って皿を置いた。
「もう出来たんスか」
「残りもんやから、大したもん出来んかったけどな」
「十分ですわ。俺自分でよおしませんから。先輩、ほんま器用やな」
「そ、そうか?」
「そういうとこ、好きですわ」
箸を進めながらそう告げると、ユウジは固まったまま動かなくなった。反応に困っているようだ。
いつもなら笑いながらからかってくるところなのだが―…やはり、様子がおかしい。理由は全くわからなかったが、態度が余所余所しい瞬間があるなと財前は思った。
「…固まらんといてくださいよ」
「お、お前が恥ずかしいこと言うからや!」
「何が恥ずかしいんスか」
「…………えっと…」
「ご馳走様でした」
「あ。片付けええわ!俺がやっとくから、お前先風呂入って来ぃ。着替えは後で持ってくから」
「はあ…。ほな、お先に」
そう言ってユウジは財前を脱衣所に押し込み、食事の後片付けを始めた。財前がシャワーを浴びていると思うだけで、顔が赤くなる。昼間の事があった所為か、どうしても意識してしまう。
途中、水を飲みに来た兄に様子がおかしいと指摘され、ユウジは慌てて首を振った。部屋に戻って行く兄に「後輩と勉強をするから部屋には近づかないように」と釘を刺すことは忘れない。とりあえず、準備は出来たとユウジは思う。
部屋に戻り、財前が来るのを待った。妙にそわそわしてしまう。顔が赤いのもなかなか収まらない。財前が階段を上がってくる足音が聞こえ、ユウジは姿勢を伸ばしてベッドに座り直した。まだそんな時間でもないというのに、思わず緊張してしまう。
ゆっくりとドアが開いた。顔を覗かせた財前を見て、ユウジは驚く。
「先輩」
「って、ぅおう!お前何で裸やねんっ!」
「着替え」
「あ…(わ、忘れとった…!)す、すまん!」
「呼んでも全然来んから焦りましたわ。家族の人と会うたらどうしようて、冷や冷やしたし。タオル、勝手に借りましたよ」
財前は腰にバスタオルを一枚巻いているだけの状態で、部屋に入ってきた。風呂に入った直後でほんのりと上気した肌に、濡れたままの髪。今のユウジには刺激が強すぎた。
服を用意するのも忘れ、思わず見入ってしまう。彼の裸など、着替えの時に何度も見ているというのに―…
「ユウジ先ぱ―……っ!?」
ユウジは耐え切れずに立ち上がり、財前の首に腕を回した。驚く財前の言葉を遮るように顔を近づけ、キスをする。
不意打ちに驚く財前はしばらく硬直したいたが、ユウジはなかなか離れない。彼も我慢できなくなり、頬に手を添え口付けに応えた。ユウジからキスをして来たのは、この時が初めてだった。
「っは……んぅ…」
「ん…っ………は…。先輩、アホっスか。何考えて―…」
「も…無理……っ」
「は?……っ―……!先輩、ソレ―…」
「お前が…悪いんやからなっ……!」
ぴったりと密着している上に財前はタオル一枚しか着ていない状態だ。ユウジの異変に気付かぬ振りは出来なかった。
下腹部に膨らみを感じる。ユウジの中心が熱を帯びていることに気付き、財前も思わず顔を赤くした。この状況でそんな反応をされてしまっては―…
「…さすがにキツイんスけど」
「お前ばっか涼しい顔して…ムカツク…っ!」
「いや、ほんま我慢すんので精一杯ですわ。ってか、何で俺が悪いんスか。今日、様子がおかしかったんと関係あります?」
「っ……!お前が…冷めるとか、言うから…っ」
「…は?」
「焦らされたら、冷めるとか……今まではすぐヤっとったとか…」
ユウジにそんな話をしたことは一度もない。今までの経験を惚れた相手に話すほど、無神経ではないのだ。彼は一体何の話をしているのか―…。財前は首をかしげる。
しばらく考え、小春の言葉を思い出した。昼休みが終わった後から様子がおかしかったと言っていた気がする。昼休み…焦らされると、冷める―……
「……あ」
そういえば、今日は友人たちとそんな話をした。校舎からは少し離れた庭で、くだらない話題に付き合ってやったのだ。まさかそれをユウジに聞かれていたとは、思いもしなかった。
彼の態度がおかしくなった理由にも説明がつく。自分達は付き合って数ヶ月が経っているのだ。きっとこのことで思い悩んだに違いない。財前は慌てて首を振った。
「あれは、あいつらに話合わせただけっちゅーか…別にユウジ先輩のこと言うてたんやなくて…!」
「でも、今まではすぐヤっとったんやろ!」
「そ、そういう時もあったってだけのことで……ああ、もう、あんま聞かんといてくださいよ。先輩は、そういうのとちゃうねん…」
「な、何が違うんや…!」
「本気で好きやし…その、嫌われたくないし…。先輩初めてみたいやったから、無理にせぇへんって決めとったんスわ。やから別に、冷めたわけやないです。今やって―…」
「っ………!」
財前に抱き寄せられる。腰を押し当てられ、ユウジは耳まで赤くなった。タオル越しの膨らみに気付いたからだ。財前も、確かに欲情している―…
「ぁ…嘘―……」
「ユウジ先輩、俺が冷めたんかもって、焦ったんスか?はよヤらなって、考えてくれたん…?」
「んっ……や…触んな……っ」
「そのことばっか考えて、興奮してもたん…?それでずっともじもじしとったんスね」
「っふ……ァ…っ」
全部、財前の言った通りだった。話を盗み聞きしてしまってからそのことばかり考えてしまい、身体が熱くなったのは事実。今も財前に触れられ、感じてしまっている。熱が収まる気配はない。
再び唇を重ね、財前は手を下ろす。膨らんだユウジの中心に触れ、ズボン越しに刺激した。
「もうきつそうっスね…」
「あっ……や……嫌や…!」
「っ…先輩、さっき言いましたけど…俺、先輩が嫌ならする気ないんスわ」
「光―…」
「もし嫌やったら、言うて下さい。今なら止め―…」
「あ、アホ…!」
「…何でそうなるんスか」
「俺らの仲やろが…っ。『押すな言うたら押せ』はお約束やろっ」
「………は?」
「よく…あるやろ。熱湯風呂とかで、芸人が『押すな』言うたら、『押せ』の合図なんやって……」
「……………」
「先輩がわざわざ誘ったっとるんやからっ……少しは気ぃ回せや…!」
「そんなん言うたら何でも都合良く捉えますよ、俺」
財前はそう言ってユウジをベッドに押し倒し、覆い被さる。深いキスを繰り返しながらシャツを脱がせ、首筋から胸にかけて、ゆっくりと肌をなぞっていった。
既に尖っていた胸の突起を口に含み、吸い上げる。ユウジはビクビクと身体を震わせ、財前の愛撫に反応した。
「ぁっ……や、…んっ」
「(あかん、ほんま幸せすぎて調子乗ってまいそう…)」
「ひぁ……っ…あ、光っ……!」
「先輩、可愛すぎ。声だけでイってまいそうですわ」
「アホ…!」
「ここも…全部、可愛え」
「っあ!…あ、ゃ……んっ」
「先輩声抑えて…。ほんまはもっと聞きたいけど、家族にバレるとマズイでしょう?」
「んんっ……」
「(きつそうやな…)何か曲かけときます?ちょっとは誤魔化せるかもしれないですし」
「ん……そうして…。俺、声出さんとか無理っぽい…」
ユウジが頷いたので身体を起こし、財前は適当にCDをセットする。自分が貸したものや薦めておいたアーティストのCDが並んでいるのを見て、嬉しくなった。最高のシチュエーションだと思う。
初めての瞬間は大事にしようと思っていたが、まさかこんな形で実現するとは―…
「(しかも先輩から誘ってくれるて、これ以上はないでな…)」
「ひかる……はよ、して…」
「っ………!」
ユウジは胸の前で腕を組み、震えを抑えようとしている。足を閉じ、窮屈そうにもぞもぞとしていた。この姿は財前を煽るのに十分なものであり、CDケースを置いた彼はすぐにベッドへ戻る。
恥ずかしさからか、ユウジは顔を赤くしたまま視線を逸らした。彼の頬に優しく口付けをして、再び覆い被さる。首筋に舌を這わせながら、左手を彼のズボンの中へ滑り込ませた。熱くなっているものに触れるとユウジの身体はピクンと跳ね、彼の口からは艶っぽい声が漏れた。脈打つ感触も直に伝わってくる。
「先輩…大きなっとる。俺でも感じてくれるんや…なんか嬉しいかも」
「あ…っ……も、アホ……」
「濡れて気持ち悪いでしょう?脱がしますよ…」
下着ごとズボンを引き下ろし、露わになった中心に視線を落とす。ユウジは顔を腕で隠し、恥ずかしさに耐えているようだった。この反応が可愛らしく、財前は思わず微笑んだ。
「濡れとる…」
「ひぁっ……、あ…っ」
「すごい綺麗で…やらしいっスわ…」
「っふ……んぁっ…!」
「先輩、声……」
「ん―……っ」
ピクピクと反応しているその先端を舌で弄り、刺激する。財前は躊躇いもなく立ち上がったものを口に含み、吸い上げた。舌が絡み、締め付けられる。その感覚にユウジは目を潤ませ、呆気なく熱を吐き出した。
「ぅあ……ぁ…っ―……!」
「んっ……」
「っは…ん………ひか―…」
「気持ちよかったっスか…?」
「やから、聞くなって……!」
「ケホ……。初めて飲んだわ。ユウジ先輩やなかったら、無理」
「……やっぱ不味いん?」
「苦いっスわ」
「す、すまん…」
「ええですよ。出して欲しくてやったんやし」
財前はそう言ってユウジの耳元に顔を近づけ、続きをしてもいいかと尋ねる。ユウジはちらりと視線を下に向け、タオルを押し上げているものに気付いた。財前も、限界が近づいているはずだ。
腕を回して小さく頷く。それを見た財前は「優しくする」と囁き、固く閉ざされた蕾に唇を落とした。
「ァっ……光、そこ…きたない……っ」
「先輩、部室でシャワー浴びたんでしょう?」
「そういう意味やなくて―……ひぁ!」
「力抜いててください。慣らさなあかんので…」
「ぅ……んぅ〜……」
「先輩のここに、挿れるんですから」
「っふ……ぁ―…っ」
すっかり萎えてしまっていた中心を再び手で扱き先端に爪を立てると、先走りが零れ、財前の指を濡らした。
「良かった、いけそうっスね」
「あ…も、マジで死にたい……」
「俺は最高に機嫌ええっスわ。ほら、これ、ユウジ先輩の先走り―…」
「嬉しそうに見せるなアホ!」
左手をユウジの目の前に示し声を弾ませる財前に、ユウジはムッとしてみせる。
財前は嬉しいのかなかなか手を引く気配がない。恥ずかしさに耐え切れなくなったユウジはその手に噛み付き、指を舐め始めた。
「っふ…(ほんま不味い…)」
「っ………!」
「見せびらかせんようにしたる」
「あの、先輩…」
「んっ……何や……」
「めっちゃ逆効果なんですけど」
「ふぁ?」
「(ぅわ…めっちゃエロい…。無意識にやっとんのやから、怖いよな…)」
「(光、顔真っ赤や…)お前、指感じるん…?」
「こんなされたら誰だって感じるで。…ま、ちょうど良かったですわ。よお濡らしてくれたし、これで指入りそうや」
「へ?……っあ!?」
「力抜いてください」
「む、無理や……ぁっ…」
ユウジの唾液で十分に濡れた指をゆっくりと奥へ進めて行く。苦しそうな声が聞こえたが、優しく宥めながら慎重に指を増やしていった。内壁と指先が擦れる度に、ユウジは熱っぽい息を漏らす。彼の反応を確かめながら、財前はあるポイントで指を曲げた。
「っは……!ぁっ、な…に……」
「ここ…?」
「ぁ、あかん……!そこ…嫌や…っ」
「それ、気持ちええって意味ですか」
「ふぁ……っ…も、死ね…っ!」
「こんな反応して言う台詞ちゃいますよ、それ」
「あっ……ぅあ……っ!」
首を振っているが、感じているのは反応で明らかである。一本ずつ指を増やし、その一点への刺激を続けた。ユウジの中心は扱かなくても立ち上がり、ひくついている。先端からは再び蜜が零れだし、厭らしく光を反射していた。
苦痛の色しか見られなかった声も次第に甘さを増し、財前を誘惑する。
「先輩……どうっスか…?」
「聞くなぁ…っ」
「まだ痛い?」
「っく……わからん。何か、変っ…」
「(そろそろいけそうか…?)指、いっぺん抜きますよ」
「ん―……」
「凄い締め付け…。きゅうきゅう俺の指に絡んで、抜かんといてって言うとるみたいですわ」
「ち、違―……っう…!」
「今度はほんまに、挿れますから…」
「ぁ……ひか―……」
十分に慣らした蕾に自身をあてがい、ゆっくりと挿入していく。身体を強張らせるユウジに声をかけ、緊張を解してやりながら、慎重に押し進めた。
暴れられる覚悟もしていたが、ユウジは思っていたよりも大人しく痛みに耐えていた。唇を噛み、声を押し殺している。うっすらと目に涙を浮かべ、ユウジは財前を見た。財前はその雫を舐め、さらに奥へ進んでみた。
「ァ―…っ」
「きつ……。先輩、すんません。俺、止められそうに―…」
「止めんでいいから、はよ、してって…!」
「動いても平気スか」
「ん……」
財前に抱きつき、ユウジは小さく頷く。その行動はかわいらしく、普段のユウジからは想像ができないものだった。こんな表情を見ることができるのは自分だけなのだと思うと、自然と笑みが零れる。
ユウジが小さく腰を揺らしたので、それに合わせて財前もゆっくりと動いてみた。大きくなったもので内壁を擦られると、そのたびにユウジは小さな声を漏らす。口元を必死に押さえているが、あまり意味はなさそうだ。
「ぁっ……ん……っ」
「(これが、先輩の―…)」
「や……ひか……」
「(声、変わった…)……ここ…?」
「っァ……!も、あかん……出る…っ」
「くっ……もうちょっとやから、一緒に―…」
きつく自身を締め付けられ、達してしまいそうになるのをなんとか耐える。震えるユウジのモノに手をかけ、タイミングを合わせて扱いてやった。
射精を促すと、ユウジはすぐに熱を吐き出す。自分がユウジの中で達したのとほぼ同じタイミングだったのが、財前は嬉しかった。ナカで余韻に浸りながら、ユウジの紅潮した頬に手を伸ばす。ユウジは潤んだ目を財前に向け、息を乱しながら首を振った。
「あかん……」
「何が、ですか」
「はよ、抜いてや…。ちょっと擦れるだけで、きついねん…っ」
「(可愛え…。結構敏感なんや、先輩…)」
「あと…もう、余計なトコ、触らんとって…」
「感じてまうって?」
「っ………!わかっとるんやったら、はよどけ!」
「今日、誘ったんユウジ先輩ですよ。ちょっとくらい、俺の頼みも聞いてくれんと…」
「ぅっ……ん…も、そこ触ったらあかんて……!」
「全身性感帯っスね、先輩」
しばらく繋がったまま余韻を楽しんでいた財前だったが、しばらくしてユウジが大きく首を振り始めたので手を止めた。ここは大人しく引き下がり、自身をゆっくりと引き抜く。
あまりからかっても怒らせてしまうだけで、いいことはない。この雰囲気は壊さず、味わうに限る。
財前はぐったりした様子のユウジの髪を撫で、率直な気持ちを伝えた。柄ではなく普段はあまり伝えていないのだが、この時は抵抗なく甘い言葉も口にすることができた。
「ユウジ先輩」
「……なんや、もうせぇへんで」
「ちゃいますわ。……好き」
「ブッ……!おま、突然囁くな!アホ!」
「いっぺん拒否られてからなかなか手ぇ出せんとおったんで、先輩から言うてくれて、ほんま良かったっスわ。俺、今めっちゃ幸せ。……ありがとうな」
「……どーいたしましてっ」
照れ隠しなのか、ユウジはぶっきらぼうに答え、布団を被る。
彼のそんな様子に財前は笑みを浮かべ、布団ごとぎゅっと抱き締めてやった。
「俺だけやなくて先輩も幸せになるように、俺、頑張りますわぁ」
そして翌朝。
「腰がだるい」と言いながらも、ユウジは周囲にそれがばれないよう、出来る限り平然を装って登校した。隣を歩く財前は、やはり機嫌が良さそうだ。周りに花がとんでいるのが見えそうなくらいのテンションである。
朝練だけでもなんとか乗り越えよう。ユウジは大きく息を吐き、部室に入った。その日偶然先に来ていた小春は、部屋に入ってきた二人を見てニッコリ笑う。
「おはようユウくん、光」
「…っス」
「おはよう!朝イチで小春と一緒になるなんて、嬉しいなぁ」
「あら、ユウくん完全復活じゃない。やっぱり光が原因やったのね」
「は?何の話―…」
「光くぅん!どうやってユウくん治したん?何が原因やったのー?」
きょとんとしているユウジを置いて、小春は部室の隅で着替え始めていた財前に尋ねる。
財前はいつも通りの気だるげな口調で、躊躇いもなくこう答えた。
「そんなん簡単でしたわ。ユウジ先輩、欲求不満やっただけ」
「ブッ………!ひ、ひか…お前は何を―…!」
「ちょっと相手したっただけですわ」
「あらやだ。ユウくん、ついに光くんと…」
「あああああっっ!光、お前ほんっまに死なすど!よりによって何で小春にそんなこと―…!!!」
「聞かれたから」
「『誰にも言うな』て昨日何回も言うたやろが!」
「………『お約束』」
「…は?」
顔を真っ赤にして飛び掛ってきたユウジに、財前は表情一つ変えずに言う。
「背中押したっただけですわ」
「いや、それ意味わからん―…」
「『押すな言うたら押せ』なんでしょう?」
……………………
「空気読めーっ!」
「読んだ結果がこれっスわ」
「時と場合によるっちゅーねん!俺のこと欲求不満の塊みたいな扱いせんでもええやろがぁ…!」
しばらくして部室に入ってきた白石は、二人の様子を見て首をかしげた。
二人の口論を止めもせず、ニコニコと笑っている小春に、白石は小声で尋ねた。
「何かあったん?」
「大丈夫。蔵りんは心配せんでもええよ。あれ、ただの痴話喧嘩やから」
「ああ。何や、ほんま仲ええなぁ」
「痴話喧嘩ちゃうっ!」
「喧嘩ちゃいますわぁ。ユウジ先輩の照れ隠し」
「それもちゃうっ!」
「ユウジ〜。財前、お前と同じシャンプーの匂いすんでぇ」
「うっ……!」
「そうかそうか、まさかお前から誘うとはなぁ…」
「ニヤニヤしながらこっち見んなっ!俺をそんな目で見てええんは…小春だけやっ!!」
「「「…って、ええんかい!」」」
何とか誤魔化そうと叫ぶユウジだったが―…
その態度が逆に不自然になってしまい、結局その日のうちに部員全員に財前との噂が広まってしまった、とか。
「もうお嫁に行けへん…」
「責任持って貰ったりますわ」
「そんなんいらん……」
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
素敵な企画に参加させて頂き、ありがとうございます。
財ユウ初心者の私を迎え入れてくださったことに感謝…。まさか、初めての財ユウがR18小説だなんて、数ヶ月前の私は考えもしなかったと思います。(笑)
大人っぽかったり、切ない財ユウが好きなんですが、私には表現しきれず…。他の方の作品を楽しみに、頑張って書かせて頂きました。
ぎ、ギリギリ…18禁…?もっとガンガン攻めてる財前くんでいつかリベンジを…!
最後までお目通し頂き、ありがとうございました。広がれ、財ユウの輪!
© ZxY Adlut Project